ワセリン除去
今回は男性泌尿器の話です。「ワセリン除去」という言葉をご存じでしょうか。実はこの間、非常に難しいワセリン除去の施術を行ったので、そのお話をしたいと思います。
多方面で男性泌尿器を大きくする方法として、陰茎部にワセリンやプラスチックなどを入れる方法があります。これは非常に危険なもので、美容外科ではまず行われません。刑務所の中や、興味本位で行われるケースが、時々あるようなのです。ほとんどが専門家ではなく、いわば「素人手術」で行われるのですが、このような異物を陰茎部から取り除くことを「ワセリン摘出術」というのです。
美容外科で陰茎増大を行う場合には、脂肪を注入したり、シリコンボールを挿入する方法が一般的です。脂肪を注入する場所は、包皮下の二枚の筋膜のいずれかの層に、均一に注入を行うのも非常に高度なテクニックが必要で す。しかしあまり知識のない医師が施術を行うと、適当なところに脂肪を注入するケースが少なくありません。結果、陰茎が凸凹に成りかねません。そして、よく見られるのがシリコンボールを包皮直下に入れるケースです。この場合には炎症を起こして包皮が「菲薄化(ひはくか)」しやすくなります。菲薄化とは皮膚が薄くなって、中が透けて見えてしまうことです。結果、シリコンボールが露出します。
今回私が施術を行ったケースは、陰茎部にワセリンを 入れたということなのですが、最大の問題は複数の場所に注入されており、入れた場所が特定できない点でした。注入されたワセリンは石灰化して石のように硬 くなっており、それらのうちあるものは皮膚を菲薄化させて白く浮き出ており、あるものは筋膜の内側にある白膜に癒着しているという状態だったのです。陰茎の直径はなんと55mmもありました。これではもはや、性交することもできません。
実はこの患者さんは、最初から私のところにいらっしゃったわけではありません。まず宮崎大学付属病院で診察を受け、手術を断られていたのです。その後も社 会保険病院で「治せるかどうか保証できない」と言われ、さらに複数のクリニックの扉をたたいたということです。その途中で私のことが紹介され、5件目くらいで当院にいらっしゃったというわけです。
これだけの症例になると、おそらくどのドクターも逃げ腰になるでしょう。私のところでも、他のドクターはみな施術を反対したのです。しかし私は「自分がやらずに誰ができるのか」という気持ちが高まっていきました。目の前の患者さんも、もう絶望的な顔で「これが治らなければ生きていても仕方ない」といったことをおっしゃいます。結局2週間検討した上で、施術を敢行することにしたのです。
ワセリン摘出で重要なのは、まずどこに異物が入っているのか、綿密な術前検査を行うことです。今回のケースでは本人の記憶が曖昧なた め、美容外科の常識で判断することはできません。そこでまずCTスキャンによって、異物の場所を特定することにしました。その結果が下の写真です。
この写真で異物の場所を割り出した上で、施術を行います。最初から場所がわかっているので、ピンポイントで異物を取り除くことができます。下の写真は施術の様子です。一部白いゼリー状のものがワセリンです。
かなり大がかりな施術になりましたが、無事すべての異物を取り除くことができました。施術後の陰茎の直径は35mmにまで縮小しています。
今回は私のクリニックが、まるで「駆け込み寺」のようになってしまいましたが、結果的には患者さんにも喜んでいただけたので、よかったと思います。
でもこの患者さん、最後に「ずいぶん細くなったのでもう少し太くしてもらえないか」とおっしゃったんですよ。懲りない方ですね。思わず笑ってしまいました。
施術料金
手術方法 | 費用 |
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